目次
はじめに
和歌山県和歌山市、紀淡海峡に浮かぶ「友ヶ島」に行ってきました。
私は、以前和歌山に住んでいたことがあって、友ヶ島にも行ったことがあります。最近は久しく和歌山に訪れておらず、bさんがサマータイムレンダを紹介したエントリーを見かけて懐かしく思っていました。
そんなところに和歌山へ行く用事ができたため、予定を調整して友ヶ島に足を運んだわけです。秋晴れのなか、久しぶりの和歌山、久しぶりの友ヶ島を満喫した、印象深い旅路になりました。
友ヶ島汽船
友ヶ島は、和歌山と淡路島の間、紀淡海峡に浮かぶ、地ノ島、虎島、神島、沖ノ島の総称名です。離島のため、島までのアクセスは船になります。
友ヶ島汽船の和歌山側は、加太港から乗り込みます。和歌山市街からは少し離れているため、港までは車が便利でしょう。港に最寄りの駐車場は終日で700円です。公共交通機関を使うなら、南海電鉄の加太駅が便利。
乗船券売り場には、ミネラルウォーターやお菓子類の他に、水辺で遊ぶためのあれこれや日焼け止め、虫除けなどアウトドアグッズがたくさん置いてあります。友ヶ島は無人島で島にはコンビニ・商店はありません。必要なものはここで揃えておくべき。
サマータイムレンダの登場人物がアクリルスタンドになってお出迎え。関係者をあげてサマータイムレンダを推してもらっているみたいです。
出航時刻が近づいて、乗船が始まりました。前日までは荒天のため欠航していましたが、この日は久々の出航でした。欠航にならなくてよかったです。ラッキー。ただし、通常は16:30の最終便が、この日は15:30に繰り上げです。海が荒れそうなので、早めに出航するとのこと。
友ヶ島に向かうお客さんは多く、ほぼ定員いっぱいまで乗っていたように思います。船室内はいっぱいだったので、後部甲板で外を眺めていました。
船室内には入れませんでしたが、もしかするとサマータイムレンダばりに黒髪ポニテの作家先生が乗っていたかも!?
友ヶ島へ!
加太港を出て紀淡海峡に出発です!
この日は午前中から海が荒れ模様でした。エンジンがうなりをあげ、波をけたてて進んでいきます。
空は秋晴れで穏やかなんですけどね。割と激しく揺れるので、手すりにつかまって身体を固定します。
波を越える際にたった飛沫が後部甲板まで押し寄せます。あとで触ってみたら、頭髪がバリバリになっていました。塩のせいですね。
しばらくすると、友ヶ島が見えてきます。こちらは虎島です。
こちらは神島と沖ノ島です。船着場がある島は沖ノ島で、船はそちらを目指して進んでいきます。
沖ノ島の港に近づいてきました。壊れた桟橋は修理を計画中とのこと。私が乗船したのはこの日の始発便ですが、前日から滞在していたのかすでに先客がいたのにはびっくり。
ちなみに、甲板で隣に立っていた小学生くらいの女の子が、バリバリの和歌山弁で「人間がおるな」などとのたまうので、一瞬サマータイムレンダの世界に迷い込んだかと思いました。これがまた、くぎゅ似のいい声をしていたんですよ。
桟橋に接岸して、船を降りました。短い時間の航海でしたが、楽しかった!
船はいったん島を離れるようです。また帰りにお世話になります。
友ヶ島にて
船を降りると、そこは友ヶ島です。
和歌山市アニメ観光大使の小舟潮さんが出迎えてくれます。写真撮影に興じる人もちらほら。捕まえてサマータイムレンダ談義、というわけにはいきませんね。不審者になってしまいます。
アニメ化記念のポスターです。放映は少し前のことになってしまいましたから、このポスターはまるで時が止まってしまったかのような雰囲気を醸し出しています。
サマータイムレンダは、主人公の網代慎平が2年ぶりに故郷である「日都ヶ島(ひとがしま)」に帰ってくるところから始まります。私の和歌山は2年以上ぶりですが、少し慎平の気持ちが想像できたような気がしました。港に着くなり自転車に突っ込まれたりはしませんでしたけどね。
さて、気を取り直して友ヶ島の散策としゃれこみましょう。地図を見て目的地を定め、歩き始めます。
虎島へ
まずは島の端にある虎島を目指すことにしました。
島内の道は道とわかるように整備されていますし、分かれ道にはこのような案内が立っていて迷う心配はありません。ただし、現在は虎島と深蛇池が立ち入り禁止とのこと。
舗装はされていませんが、歩きやすい道です。場所によってはガレていることもあるので、歩きやすい靴は必須です。足元注意!
うっそうとした森の中を進んでいきます。雰囲気ありますね。岩肌も苔むしていて、時の流れを感じさせてくれます。
途中には展望スポットもあります。黒松の向こうに神島、いい景色です。
違う方向に目を向けると、これから行く先が見えます。岩肌は特徴的な層状の地形になっています。フリッシュ層と呼ばれる地形だとか。
分かれ道を虎島方面に進んでいきます。
再び神島が見えました。森の中と端を道が行ったり来たりしているので、海が見える場所はところどころといったところ。木陰になって日光が当たらないので、暑すぎないのはありがたい。
さらに進むと立ち入り禁止のロープが現れます。実は虎島方面への立ち入りは届出制になっています。アップダウンがあって距離も遠いので、健康で元気な人だけが届出をして行ってください、とのこと。私は届出をしてきましたので、ロープをくぐって先に進みます。
人の往来が少ないからか、地面には落ち葉が積もっています。アップダウンも増えてくるので、落ち着いてゆっくり進みます。
しばらく進むと、深蛇池に辿り着きました。ここから降りていくと深蛇池ですが、今は立ち入り禁止です。道の状態が悪くなっているからでしょう。自然の猛威を実感します。深蛇池の周辺には湿地帯植物が群生していて、約400種もの植物を見ることができるそうです。いつか見てみたいものです。
深蛇池を後にして、さらに進んでいきます。道なき道というほどではなく、道を見失うことはなさそうなので安心。
虎島の案内が登場しました。いよいよ虎島です。
虎島にて
荒れた道を進んでいくと、虎島が見えてきました。
右手の岩が崩れたような光景に少なからず恐れを抱きつつ進みます。
これより先 進入禁止。この先が虎島ですね。
虎島が一望できました。以前は干潮になると歩いて渡れたのですが、今は堤防や道がずいぶん崩れていて危なそう。立ち入り禁止になるのも頷けます。
遮るものがなく、強い風が吹きつけていました。
ぼやっとみていると、鳥の群れが通過していきました。かなりの数で迫力!
こちらは閼伽井(あかい)跡です。友ヶ島に残る5か所の行所の一つで、観念窟と序品窟がある虎島に渡る前に修験者が身を潔斎するための湧き水をくむ場所だそうです。いまは湧き水も枯れて、碑が残るのみ。
しばし景色を眺めながらのんびりしました。青い空と海に、白い雲と波が映えます。
船着場から遠いこともあって他に人の気配はなく、絶景を独り占めすることができました。
ここでもフリッシュ層が観察できました。地質に関する知識があると、もっと楽しめるんでしょうね。勉強しよう。
この辺りの岩も特徴的です。地形ができるときの状況に特徴があるのでしょう。
ひとしきり虎島の眺めを楽しんだので、引き返すことにしました。
帰り道では、どこかでみたような景色が楽しめました。サマータイムレンダ 第103話でひづるが虎島を観察していたときの構図を思い起こさせます。舞台探訪の醍醐味ですね。
道が整備されて、また行ける日がくるといいなぁ。
周囲の地形に目を配り、観察しながら来た道を引き返しました。
第4砲台跡
引き返す途中で、来た道とは別の道に入りました。ここからは島の砲台跡を巡ることにします。
友ヶ島は、由良要塞の一部として紀淡海峡を航行する船舶に睨みをきかせていました。そのための砲台や関連施設の跡が今も残っているのです。
こちらは第4砲台の跡です。船着場から離れていることもあり、人が少なく穴場的なスポットでした。
友ヶ島の写真でよく登場するのは第3砲台跡ですが、こちらの第4砲台跡も似たような構造です。
煉瓦造りの廃墟ということで、どこか天空の城ラピュタを思い起こされると評判です。
ここは砲弾を保管する弾薬庫だったそうです。
ここは砲座の跡です。丸くくぼんだスペースがあるのですが、流入する土砂で埋まっていました。
かつての威容は見る影もなし。諸行無常ですね。
内部にも入ることができますが、照明はなく昼間でも真っ暗なので、灯りが必要です。足元に注意して散策しました。
人による手入れの様子が伺えます。放置すればあっという間に森に飲み込まれてしまうんでしょうね。自然の猛威が実感できます。
南垂水キャンプ場
第4砲台跡を後にして船着場の方に戻っていきます。途中の横道に入ると、広場がありました。
南垂水キャンプ場です。友ヶ島では、届出すればキャンプができるのです。売店などは存在しないため、必要なものは全て持ち込む必要がありますが、離島ならではのキャンプが楽しめるはず。ただしキャンプできるのは夏のみ。
キャンプ場からは海が一望できます。
海岸にはいろいろなものが流れ着いていました。神様も流れ着くと考えるのは自然なことなのかも。
キャンプ場の端にはトイレもありました。水場は井戸のみで、さらに飲用不可なので、ちょっと大変かな。
晴れた日の夜は星空が綺麗なんでしょうね。
私はキャンプ初心者なので、近くにお店があるキャンプ場の方が安心ですね。
探照灯跡
キャンプ場を後にして、来た道とは別の道を進んでいきます。
しばらく登った先には探照灯跡がありました。
探照灯は、敵艦に狙いをつけるために照らす照明ですね。いわゆるサーチライトです。
当時の設備構造はよくわかりませんが、何か込み上げるものがありますね。
土砂が流入している光景が物悲しい。廃墟探索に惹かれる気持ちが少し理解できたかもしれません。
第3砲台跡
探照灯跡から引き返してしばらく進むと、第3砲台跡です。第3砲台は島に5つある砲台の中でも主力の砲台だとか。360度の砲撃が可能だったとのことです。
砲台といっても砲座だけではなく、人が生活するための施設もあります。当時の姿をとどめた建物が残っています。
第3砲台跡は友ヶ島でも一番の見どころです。たくさんの観光客が思い思いに楽しんでいました。楽しそうな人を見ると、自分まで楽しくなってきて幸せですね。
第3砲台跡の砲座は、よく整備されていて丸い形がよく見えます。
通路には照明が設置されていて、灯りなしでの散策が可能です。船着場からも近いので、体力に不安がある場合は第3砲台跡だけでも楽しめると思います。
いくつかの砲座は池みたいになっていましたけどね。これはこれで風情があってよし。
タカノス山展望台
ひとしきり第3砲台跡を堪能したので、近くにある展望スポットに移動しました。タカノス山展望台です。サマータイムレンダの作中では、旧菱形医院があった場所です。
タカノス山展望台は、標高119.70mの高所にあって紀淡海峡を一望できます。はるか四国、六甲などの山々も望める絶景スポットです。
海峡を行き交う船を眺めていると、あっという間に時間が過ぎていきます。贅沢な時間の使い方です。
淡路島や明石海峡大橋も見えました。
虎島方面もよく見渡せます。あそこから歩いて戻ってきたと思うと感慨深い。
第3砲台跡を別の角度から眺めることもできます。残念ながら、立ち入りは禁止ですけどね。
友ヶ島灯台
タカノス山展望台の次は、友ヶ島灯台に行きました。友ヶ島灯台は今も稼働中の灯台で、明治5年にできた洋風建築の灯台です。
青い空に白い灯台が映えますね。
年に何回か内部を見学できるそうです。
灯台の付近には見晴らしのよい場所があり、絶景を楽しむことができました。灯台だけあって高台にあるため、行くまでには割と登ります。
灯台の近くには第1砲台跡があります。サマータイムレンダの作中では、南雲先生の過去に大きく関わる出来事があった場所です。
第2砲台跡
第1砲台跡から少し移動すると、第2砲台跡です。海に近く、これまでの砲台跡とは違って開放的な雰囲気です。海岸線と砲台跡を絡めた光景が人気とのこと。
風化が激しく、残念ながら付近は立ち入り禁止です。
見た目はしっかりしているのですが、崩落の危険があるということでしょう。
砲台は、戦後に利用不可能とするために爆破されたとのこと。
崩落は自然の影響だけではないということですかね。
青い海と赤い煉瓦の対比が確かに美しい。滅びの美学というやつでしょうか。
野奈浦広場へ!
灯台と砲台跡を思う存分に堪能しました。帰りの船の時間が近づいてきたので、野奈浦桟橋のある野奈浦広場へ戻り始めます。
朽ちた自販機です。脱衣場やシャワーは、夏には営業しているのでしょうか。周辺にあった宿泊施設は廃墟と化していました。
野奈浦広場までの最短ルートは海沿いの道なのですが、通行止めになっていたので来た道を引き返します。途中、幸助松海岸に立ち寄りました。
松と海岸線が美しい。
炊き上げたくなる程度には、いろいろ漂着していますけどね。
帰路へ
幸助松海岸から来た道を引き返して、出発地点の野奈浦広場に戻ってきました。出航時刻まで広場を散策です。
サマータイムレンダの作中では駐在所として登場した管理事務所です。虎島への立ち入り申請やキャンプの申請はこちら。
相変わらず風は強く、白波が打ち寄せていました。
サマータイムレンダのファンに向けた聖地巡礼マップです。今回はほとんどの場所に行くことができて、充実した旅路になりました。
立派な松の木を眺めながら過ごしていると、そろそろ時間です。
行きでもお世話になったともがしま号の登場。
次々に乗船していくお客さんに混じって、私も船に乗り込みました。加太港に向けて出航です。
予報通り、海は荒れ模様です。舳先がけたてた波に虹がかかっていました。
行きと違って光の角度が異なり、虎島がよく見えます。
こちらから見ると、虎島のフリッシュ層がよくわかりますね。
さらば友ヶ島。きっとまた来ます。
しばし海上を進んで、加太港に到着。加太の町を散策してから和歌山での用事に向かいました。
サマータイムレンダ コラボ乗船記念券
ちなみに、友ヶ島汽船ではサマータイムレンダのコラボチケットを発売しています。往復2回で4000円と10%程度お買い得。9月30日までの発売予定でしたが、期間を延長して販売継続中です。私も応援の意味を込めて購入しました。これで、あともう一度は友ヶ島に行けるわけです。いつ行こうかな。楽しみ。
おわりに
秋晴れの中、久々の和歌山、久々の友ヶ島を満喫できました。夏と違って暑すぎることはなく、散策にはちょうど良い天候でした。直前まで欠航が続いていたので少し心配でしたが、無事に行って帰ってこられて結果オーライ、最高の旅路になりました。
サマータイムレンダのモデルとしての友ヶ島を訪れることができたのもよかったです。やはり興味関心を持って観察すると、より深く楽しめますね。これからも、いろいろなことに興味を持って、いろいろな場所に行きたいと思います。