とある飛空士への追憶

とある飛空士への追憶 / 犬村 小六(著), 森沢 晴行(イラスト)

2014年1月から放送中のアニメ「とある飛空士の恋歌」が気に入ったので、シリーズ始まりの作品「とある飛空士への追憶」を読んでみました。

この「とある飛空士」シリーズは、こことは構造が異なる世界を舞台に、空飛ぶ機械「飛空機」に乗る「飛空士」が織りなす人間ドラマがテーマです。「追憶」では、2つの国家間の争いを背景に、歴史に名を残した偉大なる皇妃と、名も無き飛空士が紡いだひと夏の物語が描かれています。

主人公である狩乃シャルルは、抜群の技倆を持ちながらも、その出自故に差別され、傭兵に甘んじている飛空士です。物語は、そんなシャルルが軍の高官から重要な任務を命じられるところから始まります。

貴様にひとつ、重大な任務を託したい

とある飛空士への追憶 / 犬村 小六(著), 森沢 晴行(イラスト)

とまあ、こんな言葉で命じられた任務は、敵地の中を飛んで、とある重要人物を送り届けることだったのです。彼女とシャルルは、昔面識があったものの、今は別人のよう。二人っきりの空旅を通じて、二人は少しずつ心を通わせていき、凍てついた彼女の心もついには解け出して、という筋書きです。

身分違いの恋と逃避行、ある意味ありふれたテーマにも関わらず、揺れ動く二人の内面を細やかな筆致で描き出し、飛空機と飛空機の空戦では息もつかせぬ勢いある描写でぐいぐいと読ませてくれます。

特に印象的なのは、シャルルの葛藤ですね。任務のために散っていった同僚と、目の前にいる彼女、その間で揺れ動く内心の描写が秀逸です。この葛藤が描かれているからこそ、最終局面での彼の選択と、そこに込められた思いが伝わってくるというものです。表紙に描かれているイラストも、そのラストシーンが題材ですね。最後まで読めば、タイトルにある「とある飛空士」とは誰か、捧げる「追憶」とは何か、はっきりと理解できることでしょう。

歴史にその名を刻んだ偉大な皇妃と、歴史の闇に消えた名もない飛空士。
ふたりが織りなす、ひと夏の恋と空戦の物語である。

とある飛空士への追憶 / 犬村 小六(著), 森沢 晴行(イラスト)

恋と空戦を題材に、良質な娯楽を一冊にまとめた、素晴らしい作品でした。イラストも、どこか懐かしさを感じさせる柔らかいタッチで、物語にぴったりです。こういう作品に出会えると、人生にも彩りが出るというものです。著者の他作品も、ぜひ読んでみたいものです。

あと、皇妃となった彼女の活躍も気になりますね。スピンオフ作品にならないかなぁ。

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